学生ローンと甘い罠

現在学生の街、高田馬場で異変が起きている。
ファーストフードなどで見かける高級ブランドのスーツを着こなした若者たちによる怪しげな姿を目撃するのだ。
彼らは、マルチ商法などの怪しいビジネスを斡旋する胴元に利用されている人物たちである。

彼らはSNSなどを利用し、普通では考えられないデタラメの報酬額を提示して、人を集める。
金に目がくらんだ学生には、もはや冷静に判断する理性を失い、カモがネギをしょってノコノコと騙されにやってくるのだ。
ファーストフードでの風景は、「面接」である。
もちろん面接とは名ばかりで、この場で彼らに会ってしまうと、かなりの確率で彼らの手口に捕まってしまう。
その面接では、ネットワークビジネスの本格的な勧誘が行われ、そのビジネスをはじめる為の資金がないと、近くの学生ローンに連れていかれるという段取りだ。
彼らが高田馬場で「面接」をする理由は、ここにある。
すぐに学生ローンに連れていけるようにする為だ。
考える時間を与えないのである。

それにしても、何で彼らはいとも簡単に騙されてしまうのだろうか?
確かに勧誘員たちの口がうまいという事実はあるのだが、ちょっと考えれば怪しいことくらいわかりそうなものだ。
しかも、学生ローンの申込書に記入するいくつかの項目で、事実とは異なる事を書くように指示されているケースがほとんどだ。
例えば、アルバイトや使用目的がこれに該当する。
ネットワークビジネスは最初の資金として、50万円以上もの大きな資金を要する事が多い。
しかし、学生ローンで金を借りるには、年収の3分の1までしか借りられない為、アルバイト先や収入を、借りられる要件を満たす条件で記入するよう指示されているのだ。

使用目的もそうである。
学生ローンもマルチ商法などには警戒をしているので、正直に書けば断られるのがオチだ。
したがって、旅行とかパソコン購入など、あたりさわりのない目的を書くよう指示されるのだ。

●学生ローンの対応
学生ローンではこうした問題を重大な問題と捉えており、日々情報収集と注意喚起に取り組んでいる。
マルチ商法は、一定のサイクルで新しいビジネスが出てくる為、過去の古いデータを申し込み者に見せても、ほとんど効果がないのだ。
そこで、情報収集が大きなカギを握るわけだが、なにしろ新しい情報を把握しておかなければ、学生ローンとしても対応のしようがないのである。
いったい、どんなマルチ話なのかがわからなければ、注意喚起をしようにも話がチグハグになり、相手を納得させる事はできない。
話がチグハグであるから、周囲喚起も信ぴょう性に欠けてしまい、結果、詐欺師の言う事を信じさせてしまうという悪循環になってしまう事もあるのだ。
では、どうやって情報収集するかだが、こればかりは最初の糸口を掴むには、申し込み者の証言に頼らざるを得ない。
そのビジネスの名前や、活動内容、できれば裏で糸を引く者の氏名等、何らかの情報を精査し、後はインターネットで検索をするという作業に入る。
ある程度の情報が手に入れば検索もできるのだが、情報がないと検索のしようもない。

・情報収集の難しさ
しかし、現実的には情報収集はそう簡単にはいかない。
なかなか正直に話さないからである。
裏で糸を引く者の存在がどうしても気になるのだろう。
と、いうのも裏で糸を引く指南役が、学生ローンのすぐ近くで待機している。
だから、手ぶらで帰るわけにはいかないという妙な構図ができあがっているのだ。
どう見てもおかしな話なのだが、指南役は詐欺師としての才能も天下一品なのだろう。
誰か一人、勇気を持って真実を話してもらえれば、これから出るであろう多くの被害者を救済できるので、ぜひ勇気を持って打ち明けてほしいものである。